独禁法リスクのリスクマネジメントについて②

社会常識としての独占禁止法67

執筆:弁護士  多田 幸生

  

 このコラムでは、企業が守るべきビジネスルールとしての重要性を増している独占禁止法について、お話ししています。
 今回は、独禁法リスクのリスクマネジメントについて、お話します(全2回の第2回)。。


5 施策その4 : 就業規則の懲戒ルールを整備する

 多くの会社の就業規則には、「法令違反行為」に関与すると懲戒の対象になる旨が規定されています。しかし、「独占禁止法違反行為」への関与が懲戒対象になると具体的に規定されている会社はほとんどありません。
 これを明記するだけで、一定の効果が期待できます。
 独禁法違反歴のある会社の場合は、コンプライアンス・マニュアルなどに、自社が過去に行った独占禁止法違反行為の具体例を挙げ、どのような行為が違反に当たるのか、どの程度の懲戒処分に当たるのか、どのように対処すべきかなどの解説を記載することも考えられます。


6 施策その5 : 企業グループとしての一体的な取り組みをする

 分社化・連結経営化といった近年の経営環境下においては、独占禁止法コンプライアンスを一社単体で追求することには限界があります。企業グループとしての一体的な取り組みが必要になります。

(施策例)

  • 子会社の研修,監査等に本社法務・コンプライアンス担当部署が関与・支援する。
  • 子会社にはあえて法務・コンプライアンス担当部署を設けず,本社の法務・コンプライアンス担当部署で子会社の独占禁止法コンプライアンスを推進する。
  • 内部通報窓口を本社に一元化する。


7 施策その6 : 同業他社との接触ルールを定める

 これは、カルテル・入札談合を犯しがちな業種に有用な施策です。
 カルテル・入札談合のリスクは、自社と同業他社の営業員同士が親密な関係になることにより、発芽します。
 コンプライアンス・マニュアルなどに、同業他社と接触したり、業界団体の会合等に出席する場合についてのルールや留意事項を具体的に定め、社内に周知徹底する必要があります。
 電子メール等を用いた同業他社とのやりとりについても、ルールを設ける必要があります。
 例えば、電子メールで価格についての情報提供や意見交換をしてはならないことや、そのようなやり取りの有無が監査部門による監査対象であること等を、コンプライアンス・マニュアルなどにあらかじめ定めておくべきでしょう。

以上

コラム 執筆 担当

顧問弁護士・講師  多田 幸生 Yukio Tada

会社法務の法律論と現場実務の両方に明るい弁護士として活動。
以下をモットーに幅広い業種、規模の顧問を務める
【モットー】
・法律に関する情報を正確に世に伝えていく
・法務リスクを正確に伝えて経営判断に資する
・法務部員のキャリア形成に貢献する

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