社会常識としての独占禁止法
社会常識としての独占禁止法60
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本コラムは、「独占禁止法」という法律の重要性が日々増している状況を読者に知っていただくために、執筆しています。
を私が書いたのは、令和2年のことです。
楽天市場の規約変更(送料一律無料の義務化)に対し公正取引委員会が緊急停止命令を申し立てた事件を取り上げて、独占禁止法の適用範囲がインターネット分野にまで拡大し、ビジネスシーンの社会常識になりつつある状況を、お知らせしました。
その後、どうなったでしょうか?
グルメ情報サイト、旅行予約サイト、婚活サイトなど、様々なジャンルの情報サイトが、独禁法違反で摘発されるなどしています。
令和5年の現在では、インターネットに独占禁止法が適用されることを疑う者は、誰もいないでしょう。まさに、「社会常識」です。
- 読売新聞 令和4年6月16日 「「食べログ」運営会社に3800万円余の賠償命じる 東京地裁」
- 時事通信 令和5年3月23日 「婚活サービス大手に立ち入り 「IBJ」、取引妨害の疑い―公取委」
- IT MEDIA 令和4年6月3日「宿泊予約の「Expedia」に独禁法違反の疑い 他サイトより好条件な部屋の掲載求める」
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独禁法の拡大は、インターネット分野に限りません。
公取委は、個人情報、知的財産、労働、フリーランス、プロ野球といった幅広い分野において、日々、適用範囲を拡大し続けています。
「談合」や「カルテル」といった昔からの得意分野でも、公取委は活発に活動しています。
大きな事件だけを挙げても、リニア談合事件、五輪談合事件、電力カルテル事件など、枚挙にいとまがありません。
特に電力カルテル事件では、合計1010億円という巨額の課徴金納付命令が下されたことで、社会を驚かせました。
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独禁法の拡大傾向について、東京大学の白石忠志教授は、
「独禁法はどのような商品や役務にも等しく適用される一般的で柔軟な法律だ。様々な可能性がある。これまで十分に手当てできていなかった領域にも光を当てることができる。」
とおっしゃっています。
独禁法が様々な分野に規制を及ぼすための便利なツールとして用いられている、ということです。
今後も、独禁法の拡大傾向は続くでしょう。
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今や独占禁止法は、ビジネスシーンにおいて最もホットな法律であると言っても過言ではありません。
ビジネスマンは、「優越的地位の濫用」、「課徴金」、「リニエンシー制度」といった最低限知っておくべきビジネスルールについて、素養を高めておく必要があります。
このコラムでは、今後も、独禁法についての時事ニュースなどをかみ砕いて紹介していうことで、読者の一助になればと思っています。
以上