広告についてのビジネスルール ~景品表示法の表示規制について~
社会常識としての独占禁止法86
このコラムでは、企業が守るべきビジネスルールとしての重要性を増している独占禁止法について、お話ししています。
今回は広告についてのビジネスルールを定めている「景品表示法」の表示規制についてお話しします。
1 景品表示法の表示規制とは何か
景品表示法の表示規制は、ビジネス広告の際に事業者が守らなければならない基本ルールです。
わかりやすい具体例が、消費者庁のパンフレットに載っています。

<画像出典:消費者庁 パンフレット「こんな表示を見かけませんか?」>
このような広告(不当な表示)は、商品・サービスの内容や取引条件(価格)について誤認させ、一般消費者の商品選択に悪影響を及ぼすので、景品表示法により規制されています。
違反広告は行政処分(措置命令)の対象となり、従わなければ2年以下の懲役または300万円以下の罰金などが科されます。重い規制です。
法的には、独占禁止法の特則に位置づけられます。
所管の官庁は消費者庁ですが、公正取引委員会にも調査権限(委任)があります。
2 規制の対象となる表示(広告)
事業者が商品・サービスの内容、取引条件について行う広告や表示の全般が、規制の対象となります。
(具体例)
チラシ、パンフレット、説明書、ポスター、看板、新聞広告、雑誌広告、テレビCM、ウェブ広告、実演販売、ステルスマーケティング(ステマ)
非常に幅広に規制されています。
およそ「広告」の趣旨のある表示であれば、景表法の規制対象になりうると考えた方が良いと思います。
広告だけでなく、商品の容器やパッケージ自体の表示も規制対象となります。
令和5年10月1日から、ステルスマーケティング(ステマ)も規制対象となりました。
3 「不当」な表示(広告)」の3類型
景表法は、「不当」な表示行為として、次の3つの行為を規制しています。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- その他の不当表示
①「優良誤認表示」とは、「品質、規格、その他の内容」について不当な表示をすることを言います。
簡単に言うと「これはとても良い品質(規格、内容)だ」と消費者に思わせておいて、実際にはそうではない表示のことです。
令和5年には、コロナ禍時において、商品を使用するだけで周辺の空間を除菌等するかのように表示をしていた商品が「優良誤認表示」で摘発され、課徴金6億円を課されたことが、大きく報道されました。
②「有利誤認表示」とは、「価格、その他の取引条件」について不当な表示をすることです。
わかりやすいのは「価格」です。たとえば「自社が最も安い」という広告は、それが事実でなければ、有利誤認表示に当たります。必要な追加費用を知らせずに初回費用などだけ広告することも、有利誤認に当たります。
価格以外には、例えば「量」も規制対象となります。 例えば「他社より量が多くてお得」という広告は、それが事実でなければ、有利誤認表示に当たります。
③「その他の不当表示」は特別規制です。不当な広告が行われがちな取引類型が、名指しで、規制されています。具体例は次のとおりです。
- 無果汁の清涼飲料水等
- 商品の原産国
- 消費者信用の融資費用
- 不動産のおとり広告
- (不動産以外の)おとり広告
- 有料老人ホームに関する不当な表示
4 事業者が心掛けるべきこと
景表法の表示規制は、ビジネスシーンにおける広告や表示行為のすべてを規制していると言っても過言ではない、非常に重要な法規制です。
事業者はこのことをよく理解し、自社の商品やサービスが誤って表示規制に違反することがないように、リーガルチェック体制を構築する必要があります。
例えば、新商品を開発した際は、商品の容器やパッケージの表示が「優良誤認表示」にならないように、リーガルチェックの体制を整える必要があります。
広告は、CMなど典型的な広告に限らず、看板、パンフレット、看板、実演販売、細菌はステルスマーケティング(ステマ)まで幅広に規制されているので、都度、リーガルチェックできる体制を整える必要があります。
リーガル部門以外の従業員も、研修などにより、景品表示法についての法的な素養を高める必要があります。
例えば、広告部門の担当者が表示規制の趣旨を良く理解していれば、ステマのような新手の広告手法についても「行き過ぎではないか?」などと疑問を持ち、未然に違反を防ぐことができるです。
以上